相続手続き - 実例 -

ケース3相続人が海外にいるため遺産分割協議をすることが困難な場合

Aの相続人は配偶者(B)、長男(C)、二男(D)の3名で、Cがアメリカ合衆国に在住しているため、遺産分割協議が困難な場合。

相続内容について

相続財産

土地1筆、建物1棟(自宅)
 預金 約1,500万円

法定相続分

妻(B)   4分の2

長男(C) 4分の1

二男(D) 4分の1

相続手続きのいきさつ

Aさんは、妻と子2名については全員仲が良く、自身の相続の際には揉めることはないと思い、遺言書を作成することなく亡くなりました。

ただし、長男Cさんについては、仕事の関係でアメリカ合衆国に在住しており、しばらく日本に帰国することができないため、遺産分割協議をすることが難しい状況にありました。

遺産分割協議書を作成する際には、実印を押印して印鑑証明書をつける必要がありますが、海外在住の場合には印鑑証明書の取得もできないため、どのように相続手続きを進めてよいのか分からないということで、妻Bさんと二男Dさんが当事務所にご相談にいらっしゃいました。

相続人が海外にいる場合には、遺産分割協議や相続手続きはどのように進めればよいか?

1.相続人調査

相続手続きをする際にまず行うことは、相続人調査となります。

具体的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本等を収集することにより、相続人を特定します。

稀にですが、相続人全員が把握していない別の相続人がでてくることもありますので、必ず相続人調査は行わなければなりません。

2.相続財産調査

不動産、預金、有価証券、債務等の相続財産(プラスの財産、マイナスの財産)について、どのようなものがあるか調査を行います。

3.遺産分割協議の方法

相続人のうち長男Cさんがアメリカ合衆国の海外在住であるため、日本で印鑑証明書を取得することはできません。また、アメリカ合衆国においては印鑑証明書の制度はありませんので、それに代わる書類を用意する必要がございます。

印鑑証明書に代わる書類としては、署名証明書(サイン証明書)という書類があります。この署名証明書は、アメリカにある日本国総領事館で発行してもらうことができます。

この署名証明書には2つの形式があり「形式1」と「形式2」というものがございます。「形式1」は遺産分割協議書等の書類にホッチキスで綴じて証明をもらう貼付型のもので、「形式2」は署名証明書のみを発行してもらう単独型のものとなります。

注意点としては、不動産の相続登記をする必要がある場合には、必ず「形式1」で署名証明書をもらっていただく必要があるということです。「形式2」の場合には、法務局の審査で登記が認められないことがあり、もう一度、署名証明書(形式1)を発行してもらうことになります。

当事務所から、長男Cさんに連絡のうえ、遺産分割協議書等の必要書類を郵送し、届いた遺産分割協議書と必要書類を日本国総領事館に持参していただき、遺産分割協議書に署名証明書(形式1)を貼り付けてもらったうえで返送をしていただきました。

これで遺産分割協議は成立し、相続手続きを進めることができます。

 

遺産分割の内容

遺産分割は協議の結果以下のように成立しました。

妻Bさん  相続財産全部(土地1筆、建物1棟、預金1,500万円)を単独で相続

 

不動産の相続登記は今後必ず必要です

不動産の相続登記については、これまでは任意であり登記をされない方もいましたが、法改正により令和6年4月1日から相続登記が義務化されます

今後は、過料(罰金にあたるもの)を請求されることもありますので、相続登記は必ずしてください。

 

注意点

① 相続人が海外にいる場合であっても法定相続分と異なる遺産の分け方をする場合には、必ず相続人全員が相続手続きに協力していただく必要がございます。

 

② 遺言書がある場合やすべての相続財産を法定相続分どおりに分ける場合を除き、遺産分割協議書を作成する必要があります。

 

③ 不動産がある場合には、令和6年4月1日以降は、相続登記を必ずしなければなりません。