相続放棄 - 実例 -

ケース1借金を相続しないようにする場合

Aさんには、子であるBさん以外親族はなく、晩年Bさんと一緒に同居していました。

相続放棄の内容について

Aさんには特に遺産と呼べる財産はなく、生前からBさんに『自分には何も遺産がないので、もし亡くなったとしても相続の手続きはする必要がない』と言っていました。

そして、実際にAさんは令和4年1月1日に亡くなりました。Bさんは生前のAさんの言葉通り、遺産は何もないので、役所への死亡届を出して葬儀を行い、それで全て完了したものと思っていました。

すると、令和4年2月1日に、Aさんに対する督促状が貸金業者より届きました。しかし、Bさんは『Aは、もう亡くなったので、自分がわざわざ支払う必要はないし放っておけば良い』と思い放置していました。

しかし、令和4年3月1日に貸金業者からの執拗な督促があるため、Bさんは貸金業者へ連絡し、『Aは、令和4年1月1日に亡くなったので、督促はやめてください。』と伝えました。すると貸金業者は、『あなたが特に相続放棄手続を行っていなければ、あなたに支払う義務があります。』と言われ、Bさんはあわてて当事務所にご相談されました。

借金を相続しないようにするための手続きは?

相続人Bは、自己のために相続が開始したことを知ってから3か月以内に家庭裁判所において相続放棄の申立て手続きをする必要があります。

相続放棄とは?

相続放棄とは、自己が法定相続人となった場合に、被相続人の残したプラスの財産とマイナスの財産(借金)の両方について、一切相続しないようにすることです。

相続放棄をするとその法定相続人は初めから相続人ではなかったことになります。

注意点

相続放棄をするには、被相続人が死亡して自分が相続人になった事を知った時より3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申立てをしなければなりません。
原則3か月が経過した場合には、相続することを承認したことになり、借金などがある場合には支払う義務を負うことになります。
ただし、特別の事情がある場合には、3か月を過ぎていても相続放棄できる場合があります。

相続放棄の申立てをする相続人は、相続財産を隠したり処分する行為を一切行ってはいけません。
処分する行為とは、相続財産である不動産を売却したり、預貯金を消費したりする行為のことです。
相続財産を隠す行為や処分する行為を行った場合は、相続することを承認したことになります。
ただし、資産価値のない物(日用品等)を処分しても相続放棄は認められます。

相続放棄がいったん受理されると、特別な理由がない限り相続放棄を撤回できません。
ただし、詐欺や脅迫等の一定の事由がある場合は相続放棄を取り消すことができます。

第1順位の相続人(配偶者、子)が相続を放棄した場合は、第2順位の相続人(両親)、第3順位の相続人(兄弟姉妹)が代わって相続人となります。
ケースによっては第3順位までのすべての相続人が相続放棄をする必要があります。