遺言書作成 - 実例 -

ケース1遺言書を再作成したい場合

Aの相続人は、長男Bと二男Cの2名

遺言書作成のいきさつ

Aさんは、同居して後継となる長男Bさんに自己の全財産を相続させたいと思い、公証役場に直接出向いて公正証書遺言を作成しました。

その後、Aさんは高齢のため自宅での介護が必要となりましたが、長男Bさんは介護をしないで実家を出て行ってしまいました。
代わりに二男であるCさんがAさんと同居して介護をするようになりました。

二男CさんがAさんの介護をするようになってから1年ほど経過したあるとき、Aさんは自分が亡くなった後の相続のことを考えるようになりました。
そのときふと思い出したのは、以前、公証役場で長男Bさんに全財産を相続させるという内容の公正証書遺言を作成したことでした。

Aさんは、長男Bさんではなく、同居して献身的に介護をしてくれている二男Cさんに自己の財産を相続させたいと考えましたが、遺言書の原本は公証役場で保管されているし、身体が不自由で公証役場に行くこともできないため撤回することはできないだろうと思っていました。

ある日、定期的に自宅にくるヘルパーさんに遺言書のことを相談したところ、他の方で遺言書を作り直したケースがあるということを聴き、当事務所にご相談にいらっしゃいました。

一度作成した遺言書を撤回し、もう一度作成することは可能か?

意思能力があれば、遺言書は何度でも作りかえることが可能です。

公正証書の遺言書を作りかえるには?

公証役場に、新しい内容の遺言書を持っていき、その遺言書の中に「令和  年  月  日に作成した遺言は撤回する。」という文言をいれておくことにより、以前に作成した遺言書は撤回となり、新しく作成した遺言書が有効なものになります。

公証役場に直接いくことができない場合にはどうすればよいか?

公証役場にて公正証書遺言を作成する場合、原則としては、遺言者が自ら公証役場に行き、公証人と証人2名の面前で、遺言の内容が間違いないことを伝える必要がありますが、身体が不自由などの理由により公証役場に行くことが難しい場合には、公証人と証人2名に自宅や病院、介護施設等に来てもらうことも可能です。

注意点

遺言書を作りかえるには、意思能力が必要となります。

相続人には遺留分が認められていますので、「二男Cさんに全財産を相続させる」遺言書を作成したとしても、長男Bさんは相続財産の4分の1にあたる遺留分を請求する権利があります。

生前もしくは遺言書の中で遺留分を認められないようにするための「相続人廃除」の手続きをすることもできますが、重大な侮辱や虐待行為をされており、そのことを家庭裁判所に認めてもらう必要があります。